売上の源流を広げるという売上対策があります。しかし、この売上対策には、落とし穴があります。失敗する理由を押さえつつ、売上の源流を広げるという売上対策について紹介します。
世の中には、自社の売上を伸ばす為の対策として、「自社の売上の源流を広げる」という手法があります。
多くの会社にとっては、そうした手法に実際に取り組む必要はないと思いますが、世の中の成功事例を理解したり、誰かに提案された売上対策が目指しているものを理解したりする上では知っておいて損はないと思います。
この為、こうした手法についても紹介させて頂きます。
自社の売上の源流の更に先を意識する
この連載では、売上対策を考える上では、「自社が取る事が理論的に出来る売上」と「現実の売上」を比較し、その過程で失った売上を理解する、という手法をお勧めしてきました。しかし、そういった手法とは少し毛色の異なった売上対策が存在します。
それが、
・自社の売上の源流を広げる
というものです。
例を用いて説明しましょう。
この連載で何度か用いたお祭りの例において、これまでは、「自社が取る事が理論的に出来る売上」は、「自店舗の目の前を通る人の飲食に使える全予算を足し合わせたもの」としてきました。
しかし、この説明(定義)には、少し嘘があります。お気づきの方もいらっしゃるとは思いますが、この売上の絞り込みを検討するスタート地点が、実は絶対的なものではないからです。
もうお解りでしょうか。この記事で取り扱うのは、
・「現在、売上の最上流だと考えているもの」の「もっと上流」に遡って検討する
という概念です。
そして、その作業を行う事で、
・「現在、売上の最上流だと考えているもの」を増やす事で、自社の売上を改善する
という可能性を模索する事が出来るのです。
自社の売上の源流の先を例から理解する
少し難しく聞こえるかもしれませんが、例を使えば理解は容易です。
今回の例で、「人」の面に注目するのであれば、
・自店舗の目の前を通る人
を最上流として考えるのではなく、例えば、
・お祭りに来ている人
・お祭りに来ることを検討している人
・お祭りに来ることが出来る人
と、更に上流を考えていく事が出来ます。
そして、こうした上流が意識出来れば、自社の売上を改善する為に、
・お祭りに来ている人の数自体を増やす事で、自店舗の前を通る人の数も増やす
という対策の方向性を視野に入れる事が出来るのです。
更なる上流を意識した分析を行うべきか
では、このような検討も行うべきなのでしょうか。なぜ、最初から、このような方法を取り上げなかったのでしょうか。
それは、「多くの会社は、こうした手法について積極的には考えない方が良い」からです。
殆どの会社においては、自社が普通に考える範囲での「最上流」、すなわち、「売上を失わなかった場合に取れるはずの売上」より先については意識しない事をお勧めします。または、現在考えている「最上流の概念」の数字を「少し膨らませる方法はないか」くらいの所で止めておく事をお勧めします。
その理由は、この手法は、2つの点で採用すべきケースが限られる為です。
(ご参考)
ただし、こうした手法がある事は知っておいた方が良いでしょう。それは、他社の事例を研究したり、こうした手法を誰かから勧められたりした場合に、適切に理解したり判断したり出来るようにしておく為です。
更なる上流を意識した分析や対策を行う難しさ(1点目)
まず、この手法の採用が難しい理由の1点目は、
・この方法を採用するべき事業は相当に限られる
為です。
実は、殆どの会社は、この方針の対策で必要とされるコストに見合った結果が得られません。
同じ、お祭りの店舗の例で説明してみます。
仮に、お祭り全体の来場者を、自社が何か対策する事で、10%アップさせる事が出来れば、連動して、自店舗の利益も10%上げられるとしましょう。これだけを聞くと、この方針も検討すべきと感じられるかもしれません。
もし、現在の自店舗の利益が1000万円であれば、10%アップ出来れば100万円の利益増です。もし、数十万円くらいの費用で収まるのであれば、お祭りを宣伝する費用を自店舗で負担して、そうした対策を検討しても良いかもしれません。
しかし、利益が50万円の店舗ではどうでしょう。お祭りへの来客者を増やす為に、どの位の費用を負担出来るでしょうか。
多くの事業において、「上流を広げる」という対策は、こうした問題を抱えています。すなわち、理論上は効果があっても、「自社にとっては割に合わない」というケースが多いのです。
更なる上流を意識した分析や対策を行う難しさ(2点目)
この手法の採用が難しい理由の2点目は、
・上流方向の検討は難易度が高い
という点です。
上流方向へは、どれだけでも遡っていく事ができます。極端には、どんな事業であっても、「人」の面で上流に遡っていけば、「地球上の全人口」まで遡る事が出来るでしょう。場合によっては、「これから生まれてくる人」や「過去に生まれていた人」といった概念すら考える事が出来るでしょう。
しかし、その最上流から、現在の自社の顧客という所まで、意味のある絞り込みを考える事は、困難ですし、殆どの会社にとって、意味のある結果を生みません。
そこに手間をかけるのであれば、殆どの会社にとっては、自社が改善策を実行しやすい範囲でしっかりと対策を行った方が効率的なのです。
自社が取るべき売上改善対策を考える為に
目先の分析や対策がうまくいかないと、様々な対策に目移りしてしまうのは、私達にも理解出来ます。しかし、世の中、そんなに甘い話はありません。自社が見えている範囲の分析を着実に行う事が、現状の改善に繋がる近道であることが殆どです。
是非、その事は覚えておいて頂きたいと思います。そして、基本的な分析がうまくいかない場合でも、分析を飛び越えて安易な対策に走るのではなく、基本の分析を成功させる為に、外部の専門家を頼るなどの選択をして頂きたいと思います。
この連載では、関連記事にて、売上改善の為の分析をより適切に行う為の情報についても紹介させて頂いております。宜しければ、それらの記事もご一読下さい。
なお、当社では、様々なビジネスコンサルティングに関するサービスの一環として、こうした「売上改善の為の分析」についても支援させて頂いております。